ウイルス感染部門

ウイルス感染部門では、タイおよびわが国を含むアジア諸国で感染が繰り返されているウイルス性腸管感染症と蚊媒介性感染症を研究対象にNIHの研究者と共同研究を推進している。

ウイルス性腸管感染症では食中毒の原因病原体として、またヒトーヒト感染のみならず広く経口感染による急性胃腸炎の病因ウイルスであるノロウイルスを研究対象に、世界的な大流行を引き起こしている遺伝子型の解析を中心に進化系統解析を進めている。また、バキュロウイルスを用いた中空粒子の発現とそれに対するモノクローナル抗体を作製して迅速診断法の開発を進めている。また患者および環境水から検出されるA型肝炎ウイルスおよびE型肝炎ウイルスの分子疫学解析から、タイで流行するウイルスの遺伝学的な特徴を明らかにすると共に、その制御法の開発を進めている。

蚊媒介性感染症ではタイを含む熱帯、亜熱帯地域に蔓延するチクングニア熱を対象とし、原因ウイルスであるチクングニアウイルスの疫学的、分子生物学的、および免疫学的基礎研究を推進している。チクングニアシュードウイルスによる中和抗体測定法を確立するとともにチクングニアウイルス様中空粒子を作製してチクングニアワクチンとしての可能性を探っている。また、チクングニアウイルスに関連した細胞性因子を検索すべく各種細胞ライブラリーの作製と解析を進めている。

  • 図1. チクングニアウイルス(CHIKV)の遺伝子構造と研究課題。CHIKV(BSL3)はプラス1本鎖RNAを遺伝子にもつ直径約60-70 nmの球形ウイルスである。構造タンパクの全領域を発現することによって、形態学的にも、抗原性においてもネイティブなCHIKVと変わらない中空粒子(virus-like particles, VLPs)を産生させることができる(文献3)。また、膜タンパクE3, E2, 6k, および E1を発現するベクター、レンチウイルスパッケージングベクター、およびレポーターとしてルシフェラーゼを発現するベクターを同時に293T細胞にトランスフェクションしてシュードレンチウイルス(BSL2)を作製した。これを用いた中和実験が可能であることが示された(文献1及び4)。

研究グループ

特任教授(常勤) 巽 正志
特任講師(常勤) 水島 寛人
特任講師(常勤) 田中 淳
ポスマス派遣研究員 Uranan Tumkosit
ポスマス派遣研究員 Michittra Boonchan

論文

  • Kishishita N, Sasayama M, Takeda N, Sa-Ngasang A, Anuegoonpipat A, Anantapreecha S, 2015. Neutralization Activity of Patient Sera Collected during the 2008-2009 Chikungunya Outbreak in Thailand. J Clin Microbiol 53: 184-90.
  • Siripanyaphinyo U, Boon-Long J, Louisirirotchanakul S, Takeda N, Chanmanee T, Srimee B, Namsai A, Pounsawat P, Khupulsap K, 2014. Occurrence of hepatitis E virus infection in acute hepatitis in Thailand. J Med Virol 86: 1730-5.
  • Noranate N, Takeda N, Chetanachan P, Sittisaman P, A AN, Anantapreecha S, 2014. Characterization of chikungunya virus-like particles. PLoS One 9: e108169.
  • Kishishita N, Takeda N, Anuegoonpipat A, Anantapreecha S, 2013. Development of a pseudotyped-lentiviral-vector-based neutralization assay for chikungunya virus infection. J Clin Microbiol 51: 1389-95.
  • Li YG, Siripanyaphinyo U, Tumkosit U, Noranate N, A AN, Pan Y, Kameoka M, Kurosu T, Ikuta K, Takeda N, Anantapreecha S, 2012. Poly (I:C), an agonist of toll-like receptor-3, inhibits replication of the Chikungunya virus in BEAS-2B cells, Virol J 9: 114.