概要

一時期、感染症はワクチンの開発や抗生物質、抗ウイルス薬などの治療法の発達により克服できたと考えられていました。しかし、近年新たに出現した新興感染症や、すでに克服したと考えられていたものが再び流行する再興感染症が相次いで報告され、感染症に対する社会的な不安が高まってきました。多くの感染症は国境を容易に超え、急速に拡大することも珍しくなく、一国単独ではその侵入の予防や制御は困難であることは明らかです。

このような背景のもと、2005年に発足した文部科学省の「新興・再興感染症研究拠点プログラム」における海外研究拠点のひとつとして、大阪大学はタイ王国保健省医科学局の協力により、「日本・タイ新興・再興感染症共同研究センター」を設置しました。2010年からは「感染症研究国際ネットワーク推進プログラム」、2015年からは国立研究開発法人・日本医療研究開発機構(AMED)の「感染症研究国際展開戦略プログラム」に引き継がれ、第3フェーズが進行中です。

当センターでは、新興・再興感染症制圧を目指した研究を展開するとともに、日本およびタイの若手感染症研究者育成に取り組んでいます。また研究者コンソーシアムの形成を図り、研究の輪を大学、研究所、他海外拠点に広げるべく活動しており、世界的な感染症の制御に向けた共同前線基地としての利用が可能になっています。

共同研究センターはバンコク近郊ノンタブリにある保健省・医科学局・タイ国立予防衛生研究所内に設置されている。

研究所内にはP2・P3レベルのバイオハザード対策を施した実験室を始め、各種実験機器が設置されている。