細菌感染部門

本部門においては、タイや日本を含むアジア諸国でしばしば発生する細菌腸管感染症に重点をおいて、それらの分子疫学的調査、診断及び予防技術の開発に関する研究を,タイ国立予防衛生研究所の研究者と協力しつつ,推進している。

タイでは,熱帯という地政学的理由から,様々な細菌性腸管感染症が頻発しており,将来にわたりそれらの疾患の重要性はきわめて高い。「感染症研究国際展開戦略プログラム」(日本医療研究開発機構/AMED)の一環として、タイ国内の重症下痢患者や、(コレラ等の)アウトブレーク時に採取する検体から病原となる微生物を最新の技法を駆使し分子/遺伝子レベルで詳細に解析し、下痢原性病原体の分離・同定および疫学研究を行う。併せて、タイにおける下痢原性感染症の実態把握とその制御,および迅速簡便な病原体同定システムの開発研究を推進する。

また、世界の各地でみられるさまざまなスケールのコレラの流行は、天災、政情不安、異常気象等に伴って、社会基盤整備の不十分な地域を襲うことが多い。タイを中心とする東南アジア諸国でのコレラの疫学研究を推進し、原因菌のゲノム解析を行い、コレラの発生と拡散様式を明らかにする。コレラ菌は着実にゲノムに微小な変異を蓄積しており、病原性含めた‘進化’の態様を併せて解析する(図)。さらに、新型コレラ菌の出現・流行に備えうる早期検知・迅速対応に向けた研究を展開する。

一方、北海道大学人獣共通感染症研究センターとの共同研究として、抗酸菌(結核菌およびライ菌)のタイにおける分布とこれらの菌種の検出・診断法の有用性に関する検証実験を実施する。

以上とは別に、大阪大学微生物病研究所・日本タイ感染症共同研究センターにおいては薬剤耐性菌、特に地球規模で拡散中のカルバペネム耐性腸内細菌群の国際的分子疫学研究を大阪大学大学院医学研究科や国立感染症研究所等と共に実施している。主たる調査対象国としては日本との人的交流が深い東南アジア諸国の主要医療機関を選び,多剤耐性グラム陰性桿菌を現地医療関係者の協力を得て収集し,それらのゲノム解析を行い,データベースを構築し、薬剤耐性菌サーベイランスを行うとともに、その結果を現地医療機関へもフィードバックし、耐性菌の蔓延を防止に役立てる。薬剤耐性菌の遺伝子データベースの充実により、将来的には耐性菌出現の予測解析法の歳出等を試み,また各種の耐性様式を持つ菌の迅速診断法・検出法の構築を目指す。

  • 図 タイで分離したコレラ菌O1TSY216株は機能未知のメガレプリコン (0.9Mbp)を保有する(参照文献[1])

研究グループ

特任教授 浜田 茂幸
特任講師(常勤) 岡田 和久
ポスドク派遣研究員 Watcharaporn Kamjumphol
ポスドク派遣研究員 Amonrattana Roobthaisong

論文

  • Okada K, Natakuathung W, Na-Ubol M, Roobthaisong A, Wongboot W, Maruyama F, Nakagawa I, Chantaroj S, Hamada S. Characterization of 3 Megabase-Sized Circular Replicons from Vibrio cholerae. Emerg Infect Dis 2015, 21(7): 1262-1263.
  • Aung WW, Okada K, Na-Ubol M, Natakuathung W, Sandar T, Aye N, Oo T, Aye MM, Hamada S. Cholera in Yangon, Myanmar, 2012-2013. Emerg Infect Dis 2015, 21(3): 543-544.
  • Okada K, Na-Ubol M, Natakuathung W, Roobthaisong A, Maruyama F, Nakagawa I, Chantaroj S, Hamada S. Comparative genomic characterization of a Thailand-Myanmar isolate, MS6, of Vibrio cholerae O1 El Tor, which is phylogenetically related to a “US Gulf Coast” clone. PLoS One 2014, 9(6):e98120.
  • Okada K, Roobthaisong A, Swaddiwudhipong W, Hamada S, Chantaroj S. Vibrio cholerae O1 Isolate with Novel Genetic Background, Thailand-Myanmar. Emerg Infect Dis 2013, 19(6):1015-7.
  • Thattiyaphong A, Okada K, Khangrang S, Nispa W, Sawanpanyalert P, Honda T. Development of a 5-minute rapid test for detecting Vibrio cholerae O139. Southeast Asian J Trop Med Public Health 2013, 44(3):448-55.
  • Okada K, Roobthaisong A, Nakagawa I, Hamada S, Chantaroj S. Genotypic and PFGE/MLVA analyses of Vibrio cholerae O1: geographical spread and temporal changes during the 2007-2010 cholera outbreaks in Thailand. PLoS One 2012, 7(1):e30863.