細菌感染部門

タイでは様々な細菌、ウイルス、原虫によりおこる腸管感染症が頻発していますが、その原因となる病原体や病原因子の解析については未だ十分とはいえません。本部門では、タイにおいてコレラを初めとする重症下痢症患者を対象に、迅速な原因微生物検出法の確立や予防法の開発を目指し研究を進めています。

 

本部門は大阪大学日本タイ感染症共同研究センターの一員として、タイ王国保健省医科学局の協力のもとタイ国内の重症下痢症患者の臨床検体の収集と解析を行っています。リアルタイムPCR法による遺伝子検査や細菌培養検査により特定の病原体検出を行うとともに、質量分析法(TOF-MS)や次世代シークエンサーを用いて様々な病原体の検出・同定を試みています。また、コレラのアウトブレークに際しては、ゲノム解析により流行株の特定と伝播経路を明らかすべく研究を行っています。コレラ菌は時の経過と共にゲノムに微小な変異を蓄積しており、病原性を含めコレラ菌の進化の様子の一端を解明しつつあります。このような研究活動を通して、新型コレラ菌の出現や、流行に備えた早期検知・迅速対応能力の向上を図りたいと考えています。

  • タイ国内北部、北西部、東部、東北部、中部、南部の計8病院に急性重症下痢症で入院した患者並びに健常対照者から収集した便検体を細菌培養試験及び本プロジェクトで構築したマルチプレックスリアルタイムPCR法等により、病原体の検出および解析を実施。

研究グループ

教授飯田 哲也(兼)
特任准教授岡田 和久

論文

  • Etiologic features of diarrheagenic microbes in stool specimens from patients with acute diarrhea in Thailand. Okada K. et al., Sci. Rep. (2020) 10:4009.
  • Simultaneous detection and quantification of 19 diarrhea-related pathogens with a quantitative real-time PCR panel assay. Wongboot W. et al., J Microbiol Methods. (2018) 151:76-82
  • Vibrio cholerae embraces two major evolutionary traits as revealed by targeted gene sequencing. Okada K., et al., Sci. Rep. (2018) 8(1):1631
  • Characterization of 3 Megabase-Sized Circular Replicons from Vibrio cholerae. Okada K., et al., Emerg Infect Dis. (2015) 21(7):1262-3.
  • Cholera in Yangon, Myanmar, 2012-2013. Aung WW., et al., Emerg Infect Dis. (2015) 21(3):543-4.
  • Vibrio cholerae O1 isolate with novel genetic background, Thailand–Myanmar. Okada K., et al., Emerg Infect Dis. (2013) 19:1015-7.